13th BASE

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 打球は三塁線際を転々とするも、ファールになる気配は無い。前進してきたサードが素手で掴み、一塁へランニングスローを見せる。 (……まだ諦めるな。ウチの足なら可能性はある!)  京子は必死に俊足を飛ばす。送球がファーストの手に届く傍ら、彼女も左足でベースを踏む。判定や如何に……。 「セーフ、セーフ!」  一塁塁審は両手を真横に広げる。送球と京子、それぞれの一塁到達が同時だったのだ。  野球の規則では打者が一塁ベースに達するよりも前に、ボールを持った野手にタッチされる、或いはベースに触れられることでアウトが成立する。裏を返せば、先述の行為が同じタイミングだった場合はセーフになるということである。 「ナイス京子ちゃん! よく走ったね!」  三塁ベース上から真裕が大袈裟に手を叩いている。それを目にした京子ははにかみながらも、心の中にはほんの少しだけ嬉しい気持ちが湧いていた。 「どこがナイスなの。恥ずかしいから辞めてよ、もう……」  京子は足立との力勝負に勝てなかった。ただし結果は内野安打。運が良かったと言えばそれまでだが、そこへ辿り着くまでにはツーストライクから厳しく攻められてもファールで逃れるなど、アウトにならない努力が積み重なっている。彼女が劣勢の中でも自らを奮い立たせ、やるべきことをやり通したからこそ生まれた成果なのだ。 「ボール、フォア」  この一打が堪えたのか、足立は次打者に四球を与えてしまう。塁上が三人のランナーで埋まり、打席には三番のオレスが立つ。 See you next base……
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