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05.卒業2
「…これにて第90回聖トマス看護大学学部並びに修士・博士課程の卒業式を終わります。」
学長の合図とともに学帽を、と言う訳にはいかなかった。ここは大ホールで、アメリカ映画のような広い中庭じゃあない。それでも私たちは大歓声を上げて、お互いに抱き合ったりすぐさま写真を撮り始めたりした。来賓席にいた家族たちも皆笑顔で混ざり合う。
「理沙、卒業おめでとう。」
声が聞こえて振り向けば、満面の笑顔のママの横になんとなく照れくさそうな、それでいて満足そうでもある笑みを浮かべたパパがいた。
「よくやったじゃないか。」
「うん、ありがとう。もう本当に走り切った感じ。」
と言えば、
「まだこれからだろう。」
と苦笑される。
どうしても照れてしまって、二人の横にいる人のことを見られない。だって何でそんなに素敵なんだろう。
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