第一章 聖なる夜の贈り物

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 夏樹達が蝋燭を受け取った翌日の朝。  窓から差し込む陽の光の先。八時丁度を指す時計の掛かった柱の元にある小棚。その上に置かれた燭台に銀色の蝋燭が燃えている。  ――信じ、られない……。  ベッドの傍には大きく目を見開いた夏樹と、今にも泣き出しそうな目で口を抑える海美。  そんな二人の視線の先――ベッドの上には、 「アナタ……? 海美……?」  上半身を起こした椿。  彼女は夢でも見ているかのような表情で夫と妹を見つめていた。 「椿……? 椿、なのか……?」  夏樹が声を震わせながら立ち上がる。そしてその瞳を震わせながら一歩、また一歩と椿に歩み寄っていく。そして―― 「椿っ! 椿ぉぉぉぉっ!」  妻を力一杯に抱きしめる。  病室内に声が響き渡る。夏樹の背後で海美の目から涙が彼女の嗚咽と共に零れ落ちる。  夏樹の頬にも透明な雫が走って、陽光にきらりと輝いた。 「会いたかった。また話したかった。どうしても起きてるお前に会いたかったっ!」  固く抱きしめる。それに連れて頬を伝う涙の数も増えていき、椿の白い患者衣を濡らしていく。  そんな夫に椿は、同じく涙を溢しながら、 「――私も。もう一度アナタと話したかったっ」  と抱きしめ返した。  * * *
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