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タイムマシンの正体はこのバーチャル体験型アトラクション、“タイムスリップショータイム”だった。コンセプトでは過去の世界をそのまま忠実に再現してあるというが、それはプログラマーがデータを入力した思い出補完の世界だ。実際の過去の歴史とは全然違う場合もある。とくにあの空間は、本来の使用目的の説が複数あるのだ。
私が最初に思ったようなカフェスペース。はたまたお酒の提供がメインの居酒屋。接待メインの水商売のお店とする説もある。一方でトーキー映画の鑑賞室やCM動画を載せる企業のPRスペースという見方もあった。
映像歴史学者である彼、気良正史は約230年前のその場所を違う見方で捉えていた。彼はそこを音楽の練習場と捉えていたんだ。
次に彼とまた会えるのは、いつの日になるだろうか。できることなら、彼といっしょにいたいと思う気持ちもあったが、同時に彼の研究を邪魔したくないという気持ちもあった。彼が期待しているのは、私がいっしょにデータを復元して彼の説を実証することだけだ。そう思い始めてもいた。彼は私をただの同業者としてしか認識していないのではないか。そう思って諦めかけたそのときだ。
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