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プルルプルル
電話が鳴った。取らなければならない電話だということは重々承知している。けれども、この瞬間だけは、待ってほしい。もうちょっとだけ。
マイクロチップフォンに通知された名前は、気良正史だった。震える指先で通話ボタンを押す。電話の先では歌うように喜んでいる彼の声が聞こえた。
「やっと音声データが復活したんだ。歌詞は今では使われていない古語だけど、断片的に残っていた民謡や童話のメロディとも完全に一致する。やっぱり僕の説は正しかったんだ。ねえ、これから歌うから、戻ってもう少しだけ聴いてくれないかい?」
その言葉を聞いた私は、今までの悩みも吹っ飛んで彼に即答した。
「うん、もう少しだけ。」
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