言えなかった言葉

――――翌日。

　僕は近所の店で本を買った。

　今話題の漫画を一巻から最新刊までを一気に大人買いだ。

　一昨日の昼休み、友達同士の会話に自分だけ入れなかったのが痛かった。

　主人公らしい男のどこがカッコいいだの、どの女の子がタイプだのテキトーに相槌を打ったけれど人気っぷりからすると今後も話題にはなりそうで今更ながら追っかけてみようというわけだ。

　で、早速読んでは見たものの、何が良いのかわからなかった。

　確かにキャラの一人一人に個性があってストーリーだって予想もつかない角度で進む。
されど僕には、友達含め世間が熱狂的になる理由がわからなかった。

　単なる暇つぶし。それくらいが丁度いい。

　それに、僕の好みは少しズレているらしい。

「そんなとこあったっけ……？」

「そんな台詞言ってねぇよ」

「ま、まぁお前の好みだしな、俺にはわからんけど」

　なんて言葉を友達から何度も引き出してしまった。

　中には、新しい視点だとかそれは盲点だったと新鮮な反応も見れたけれど。

　今思えば参考書や自己啓発本でも買えばマシだったかもしれない。