1.特別なジェラートを君に

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************************ 「ごめん、もう1回言ってもらっていい?」 女友達の結衣が、ほっぺに空気を含み、笑いをこらえた顔で有紗を見つめた。 「だから!ポメリージョ・ジェラート!!」 有紗がムキになって大きい声を出すと、結衣を中心とした女子高生4人は、仰け反るように笑った。 「なんで笑うのぉ?今空前のブームを巻き起こしてるジェラート屋さんなんだけどぉ?」 口を尖らせる有紗の肩を結衣がパンパンと叩く。 「ごめんごめん、なんか噛まずに滑らかに言う有紗のドヤ顔が楽しすぎて……」 結衣の言葉に残りの3人がまた笑った。 「ふんっ。羨ましがっても一口も上げないからね!」 宮城有紗は鼻を鳴らしながら4人を順に睨んだ。 今城西駅西口にあるショッピングモールで、イタリア市が開催されており、その目玉ともいえるポメリージョ・ジェラートのアイス券をもらったのだ。 先月アイスクリームの世界一を決める、アイスオブザイヤーで大賞をとったこともあり、ポメリージョ・ジェラートのブースだけ、パニックを避けるため前売り券での販売となっていた。 販売開始早々15分で売り切れた前売り券は、子供会のくじ引き大会の大賞や、商店街の福引の1等賞にも使われ、城西町上げての大騒ぎとなっていた。 「本当は皆で回し食べしようと思ってたのにっ」 有紗は長い髪を垂らしながら机に頬杖をつくとフンと膨れた。 「まあまあ。そう怒らないでよ、有紗」 ひとしきり笑った結衣がいい匂いをさせながら顔を寄せてくる。 「せっかくのクリスマスじゃん?有紗には美味しいアイス、独り占めしてもらいたくて」 「よくゆーよ!」 結衣がこんなに優しく話しかけてくれるなんてそうそうないので、まだ膨れたふりを続けていると、 「でも、彼のことは独り占めなんて、しないよね?」 「―――はあ?彼のこと?」 眉間に皺を寄せた有紗を皆が見下ろす。 「な、何よ……」 「実はね、クリスマスにみんなでカラオケに行こうって話になっててー」 「は?聞いてないんだけど」 「男子もね、誘おうってことになってー」 「はあ?聞いてないんだけど!」 「ーー有紗」 結衣が形のいい唇を有紗に寄せてきた。 「猪股君のこと、誘ってくれるよね?」
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