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「素敵なネクタイですね」
柄にもなくサンタクロース柄の可愛いネクタイを付けて、管理棟のベンチで煙草を吸っていた牧村に話しかけると、彼は「どうも」とそっけなく言った後にギョッとして振り返った。
「新谷!?なんでいんの?」
「あはは。反応おそっ」
新谷はニコニコと笑いながら、牧村の脇に腰を掛けた。
「実は紫雨さんが怪我しちゃって」
「怪我?」
牧村は白い煙だか息だかわからないものを吐き出しながら新谷を覗き込んだ。
「昨日、事務所の外階段で転んだそうです。骨に異常はないんですけど、どうしても動けないからって今日明日だけ臨時でこちらに」
「ーーーへえ」
そう言えば今朝は紫雨のキャデラックが停まっていない。
「まあ、店長がいないとこっちも大変だろうけど、八尾首はお前がいなくて平気なわけ?」
「あ、はい。恥ずかしながら」
新谷は苦笑しながら頭を掻いた。
「ミスターオールマイトの篠崎さんがいますし、渡辺さんっていう臨機応変タイプもいますし、後輩もメキメキ力を付けてきていまして」
「……お前ひとり抜けても支障ないと」
「う。人から言われるとなかなか辛いものがあるんですけど」
「へえ」
牧村は改めて煙草を咥えると足を組んだ。
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