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「もー、ほんとに最近生活厳しいから、ちょっとせっついたの。そしたら貸してくれるって」
子供みたいにはしゃいで言う姿は、無邪気を通り越している。冴子は必死に次の言葉を探した。なんて言う? なんて言ったらいい?
「そ、それは、よかったわね」
でちゃった!
思ってない言葉!
「んー、でも返すあてがないんだよね」
それって……親でもそんな都合よくお金を貸してくれるものだろうか? 不思議すぎて冴子は訊いてみた。
「そんなに簡単に貸してくれるの? お金」
「うん! そうなの。竜聖のところはお医者さんの家系だからみんな金持ちでさあ、喜んで貸してくれるって言ってたよ」
初耳!
あのヤンキーそうな風体のご主人がまさかそんな金の卵だなんて! 冴子は耳を疑った。
「そ、それはすごいじゃない。初めて聞いたわ」
「そうなんだよねー、竜聖ってさ、反抗期にかなり父親とやりあってほぼ勘当した形で家出してたの。けど、娘たちが産まれてから向こうから連絡くるようになってさ、最近」
「へえ……」
あ、パスタが冷め始めてる。
冴子が下に目をやる。
「他の兄弟はみんな結婚まだなんだって。初孫で嬉しいらしいよ? 私はあまり向こうの家とは合わないけど」
「そうなんだ……美衣は医者とか大学とかって雰囲気じゃないからちょっと意外だったよ」
その時、頼んだドリアがやっと到着したのだった。
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