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「熱々ですのでお気をつけくださいませ〜」そう言うと店員は颯爽と去ってゆく。
「さ、食べよっか」
美衣はスプーンを手に取る。
そしてドリアを口に入れながら「熱いー! チーズうまっ!」と黄色い歓喜を上げた。
一方、冴子はすっかり冷めたパスタにフォークをぶっ刺す。
咀嚼しながら我が家に思いを張り巡らせていた。
――ま、困ったことの一つや二つ……うちだってあるけれども――
「でもさ、冴子……心配してくれてありがとね。心配してくれたんだよね?」
美衣は、ドリンクバーのおかわりの為に立ち上がった時にそう言った。
「……うん。帰ったら心春ちゃんと話をしてみてよ。またどうなったか教えて」
「うん、そうする。訊いてみるね」
きっと、なんとなく出ちゃったんだろう。
死んじゃえなんて言葉、今どきネットなんかで嫌という程みかけるから。どこからでも覚えてしまう。
こんな事で揉めたくないから。
この街は、若い層が多くて子育て支援の充実した未来づくりになっている。
なんていっても女性の働き方への支援もあるし、LBGTQや障害者の問題にも前向きに対応していて、比較的人気のある街だ。
冴子自身、ここの土地柄がとても気に入ってるし、長く住みたい。家だって購入したし。
出来るだけ揉め事は避けたい。それが本音。
だからこのままランチしてお終いにしようとしたのに……それなのに、冴子は何か引っかかっていた。
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