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――いつもの事だよ!
普通、こういうのって、それだけでお終いなのかしら?
心春ちゃんが言ったことは……謝ってはくれないの? 確認したら謝ってくれる? ううん。美衣はそんな感じじゃない。
大変なことを口走ってしまったっていう感覚が彼女からは見えない。
自分じゃなくて、もしも違うお母さん相手だったら、美衣はなんて対応したんだろう? 死んじゃえなんて……うちの紬がお友達に言ったとしたら、電話でも何でもして平謝りするところなんだけど。
固くなったパスタにまた無理やりフォークをねじ込みながら、冴子はそっと美衣を見た。
普段通りの格好。飾らない彼女はすでに何度か見た事のあるパーカーをずっと着ているように思える。だって裾口が広がってる。
ご主人が働いてないってことは金策に大変なんだろうけれども、あまり懇談会や参観などでもお洒落をしたところを見たことがない。化粧だって眉毛を書いてるくらいのもので。
「そーだ! 冴子!」
うわっ!
急に大きな声を出されてビクッとしてしまう。
「な、なに?」
「入学式の時に言ってた旅行のことだけどさー」
「……うん?」
そんな話をしていたっけと冴子はぼんやりと思い出した。
――卒園祝いの次は、小学校入学祝いにみんなでどこか行こうよ!
そうだ。
その時、幸宏が銀行から紹介された会員制ホテルのオーナー契約をしているから、そのリゾートホテルにみんなで行くのはどうだろうかって話をしていたんだ。
ウェルカムリゾートとのオーナー契約は、年間に1000万ほどの支払い。
決して安くはない。
でも、各地にあるリゾートホテルの予約も優先して取れるし、安くいける。
しかも高級な場所に。
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