episode 1

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あの時は由香里も美衣のところもそれを聞いてとても喜んだんだ。たしか。 「あの旅行ってさぁ、いつ行く?」 ドリアのエビをつつきながら言う美衣。 「あー……、いつって……」 あなたのご家庭は…… それどころじゃないんじゃないの? 金策に困ってるのに旅行なんて行ってもいいの? これは訊くべきだろうか? なんかとてつもなくモヤモヤする。 「あのさ……っ」 冴子は、意を決して口を開いた。 いろいろ気になるっ! ドリアのチーズを伸ばして頬張ってる美衣に向かって言葉を選ぶ。 「さっきの件なんだけど、ちゃんと謝って欲しいの。それから、旅行のことは……その、ご家庭それぞれあると思うけれど、大変な時に行ってもいいの?」 フォークを横に置いて、冴子は一気にまくしたてる。冷や汗と共に。 「え? あー、ごめんね。消しゴムの件は紬ちゃんに謝っといてよほんと、ごめん!」 いやいや、違うよね。 「あ、そうじゃなくって……ちゃんと心春ちゃんから紬に謝って欲しいの」 「え? 心春から?」 「うん。そういうの大切だと思うの。勿論、心春ちゃんの口から話を聞いてから、ね」 そういう冴子をジーっと見つめて、美衣はコーラを一気にのんだ。 「わかった。帰ってから話をしてみるね」 よかった…… これでちょっと分かってもらえたかな? 冴子はフォークをまた手に取りかけた。
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