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あの時は由香里も美衣のところもそれを聞いてとても喜んだんだ。たしか。
「あの旅行ってさぁ、いつ行く?」
ドリアのエビをつつきながら言う美衣。
「あー……、いつって……」
あなたのご家庭は……
それどころじゃないんじゃないの?
金策に困ってるのに旅行なんて行ってもいいの? これは訊くべきだろうか? なんかとてつもなくモヤモヤする。
「あのさ……っ」
冴子は、意を決して口を開いた。
いろいろ気になるっ!
ドリアのチーズを伸ばして頬張ってる美衣に向かって言葉を選ぶ。
「さっきの件なんだけど、ちゃんと謝って欲しいの。それから、旅行のことは……その、ご家庭それぞれあると思うけれど、大変な時に行ってもいいの?」
フォークを横に置いて、冴子は一気にまくしたてる。冷や汗と共に。
「え? あー、ごめんね。消しゴムの件は紬ちゃんに謝っといてよほんと、ごめん!」
いやいや、違うよね。
「あ、そうじゃなくって……ちゃんと心春ちゃんから紬に謝って欲しいの」
「え? 心春から?」
「うん。そういうの大切だと思うの。勿論、心春ちゃんの口から話を聞いてから、ね」
そういう冴子をジーっと見つめて、美衣はコーラを一気にのんだ。
「わかった。帰ってから話をしてみるね」
よかった……
これでちょっと分かってもらえたかな? 冴子はフォークをまた手に取りかけた。
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