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「でもさ、旅行は大丈夫だよ! うちはさっき言った通りお金はなんとかなるからっ!」
「あ、え、あ……うん……」
冴子は小さく頷いたのだった。
それからは二人で他愛のない話をした。
美衣の好きな韓流スターやドラマの話を。そしてスイミングを始めるとか始めないとか。担任の先生の評価とかいろいろと。
ヨガについても訊かれたことには答えた。
その中で、うちの紬の様子を心配はしてくれないの? なんて、話をしながら頭の片隅でぼんやりと思う。
最初、私たちってどんな出会いだったっけ?
保育園に入ったのは、由香里と美衣が先だった。自分は1番後に入って……最初は由香里と話すようになって、あとから美衣がついてきた感じ。
あ! そうだ、と冴子は思う。
いつも由香里が真ん中に入ってくれてたから気が付かなかっただけなのかもしれない。美衣のこんなふうな……マイペースなところ。
こんなに価値観が違うって今回の一件で実感した。冴子にすれば興ざめに等しい……なんかそんな感情が芽生えてしまう。
この日を持って、冴子の心の中に暗雲が立ち混み始めたのだった。
この不安な気持ちはこの先どうなっちゃうんだろう?
由香里……
彼女はいつも明るくて前向きだ。
彼女は今、何をしてるんだろう?彼女が恋しくなった。フォロー役をやってよ。美衣のことにも躊躇なく言葉を言うことが出来るあなたが羨ましいのよ。
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