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工藤 由香里
工藤家の朝はゆっくりしている。
1番先に起きるのは一人息子の陽斗。
二番目は父親の明人で、最後に由香里が眠たい目をこすりながら、もさっとしたパジャマ姿で現れるのだ。
「ママ、卵焼いたよー」
「いっつもごめんねー。ありがとう」
寝坊ママのおかげでしっかり者に育った陽斗は、自分で着替えて小学校に行く準備を始めている。欠伸をしながらそれを眺めて、由香里は旦那である明人の為にコーヒーのスイッチを入れた。
「昨日も遅くまで仕事お疲れ様」
明人は、通りすがりに優しく一瞬だけハグをして、労いの言葉をかけてくれる。リビングには小春日和が朝早くから注ぎ込まれていて、由香里は今日も一日頑張ろうという気持ちになれた。
「ん、ごめんね。私いっつもこんなんで」
「いいんだよ、俺は仕事頑張ってる由香里が好きだからさ。ほら、陽斗も一人でなんでも出来るようになってきた」
「あ、ママ! 今度の懇談会のお手紙のお返事くださいって先生が言ってたよ」
「そうだっ! いけない。忘れてたー」
由香里はコーヒーをいれて明人にマグカップを渡すと、手紙に目を通してランドセルにいれたのだった。
今度の懇談会は、来月。
はあ。めんどくさい。
仕事だけでも大変なのに子供行事はなんか億劫になってしまう。
ママ友達の冴子も美衣もしっかりしてるのにいつまでも私ってこんな性格なんだよなあ。
なんで人馴れしないんだろ。息子のほうがよっぽどしっかりしてるや。
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