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「ね、二人って久しぶりだよね。由香里がいないのは」
「そうね。ちょっと……今日は心配した事があってね……」
冴子はそう一言置いて、朝に起きた出来事を丁寧に話し始めた。紬がいつもと様子が違ったこと、そして心春ちゃんに「死んじゃえ」と言われたこと。
一通り話して、冴子が最後に「まあ、心配なんだよね」と付け加えると、美衣は小首を傾げたのだった。
「なんで?」
キョトンとしている。
「なんでって、今まで心春ちゃんはそんなこという子じゃなかったでしょ? 最近何かあったのかなあって思って」
ドリンクバーのジャスミンティーを口に含みながら冴子は返事をした。
「いや、うち、毎日だから」
美衣は、コーラを片手に笑う。
「へ? どゆこと?」
冴子の手がとまる。
「うちさー、女の子二人じゃん? だから大変なんだよねー、昨日も学校から帰ってきて美月とお菓子の取り合いになっちゃって、言葉だけじゃなくて、叩いたりもするもんだから旦那と必死に止めたよー」
頬杖をついて窓辺を眺めながら語る美衣に冴子は食い入った。目が離せない。
それ、どういう事態になってる?
「……え、と、女の子なのにそんなことあるの?」
「あるよー。そっか、冴子のところは一人っ子だもんね。兄弟喧嘩はないのか」
ズブリ、と言葉の刃が冴子の胸をえぐる。
一人っ子……それは言われたくない言葉だった。
……ていうか、どうして学校帰りの時間にご主人が家にいるのか?
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