ママ友、神話 1

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季節は春。 卒園式が無事終わった帰り道だった。桜道を通り抜ける最高のタイミングで誰かが言葉を放つ。 もう今は誰が言ったか忘れてしまったけれど―― 「ねえ、すごくいい保育園だったよね」 「うん。今から振り返るとそう思う!」 「桃田先生怖かったけどねー」 そんな会話をしながら歩いている大人六人は、とても仲睦まじく見える。その横をお互いに手をつなぎながら歩く男の子一人と、女の子三人の姿も愛らしくて、横を通りすがる人達はにこやかに目をとめる。 ――卒園式の格好で歩くママ達は、晴れ晴れとした顔をしていて。 幸せそのものの光景だった。 これ以上の幸せなんて、世界のどこにあるというのか? 「ママ〜! 明日からみんなで遊園地行くんだよね?」 「そうよー」 一人の女の子が高い声で言うと、一人のママが笑顔で答える。 きゃあっと嬉しそうな声が空高く上がった――
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