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序章
カッ、と目の前で、炎が爆ぜる。
ほんの一瞬。
その、ほんの一瞬で──彼は自分の全身が激しい炎に巻かれるのを感じた。
ほとんど反射で閉じた目は、今はもうピクリとも開く事が出来ない。
ドサッと大きく遠くに音がしたのは──自身が地に倒れた音か──?
辺りの音が、急激に自分から遠ざかって行く。
何も聞こえず、何も感じない。
だというのに、長年培ってきた“敵の気配“だけははっきりと身に感じていた。
うつ伏せに倒れた自分の目の前に“二人の敵“が悠然と立っている。
一人は剣術を嗜む者。
もう一人は、魔導士か。
「く……あ……っ」
〜こんな所で死ぬのか。
何も貫かず、何も守らず、尊厳すらなく。
……指が地面を削る。
ガタガタと指の先が土を掴むが……それだけだった。
スッと眠りに落ちる様に、意識が抜ける。
指は土の上に立ったまま。
ガクリと首から力が抜けて──……そうして“彼“は、動かなくなった。
“彼“の前に立っていた魔導士はそれを確認し、くいと顎を上げ視線を“彼“から辺り一帯へと広げた。
「北方最強の騎士団を滅ぼしてほしいと言うから来たけれど、大した事はなかったわね」
「──これだけやられて生きていたら化け物だよ」
言って、魔導士の隣に立っていた男がククク、と笑う。
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