一章 騎士の覚悟

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一章 騎士の覚悟

こりゃひどい、と心痛な面持ちで辺りの惨状を見つめたのは、隣村から来た男衆だった。 激しく大破し、焼き尽くされた村。 瓦礫に埋まった者、道端に倒れた者は木炭並みの消し炭に。 建物も木も、人も地面も、どこもかしこもひどい熱波に焼き焦がされていた。 一体何をどうしたらこれほどまでの惨状になるのか……と一人の男がそっとしゃがみ込み、一つの遺体へ目を落とす。 何かをわし掴む様に、大地に突き立てられた指。 この村の中では比較的マシだったのだろう、顔も体も焼けているが、その損傷は他の遺体ほどにはひどくない。 服装や脇に落ちた剣を見る限り、どこかの騎士だったのだろうか。 歳は二十歳に届いていたかどうか。 「まだ若かったのに……気の毒になぁ」 ぽつり、青年に語りかけるように呟いて、白いハンカチを顔に被せかけた──ところで。 ふとある事に気がついて、男が声を上げる。 「おい!生きてるぞ! 誰か、早くイーヴェ先生の所へ!」
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