一章 騎士の覚悟

3/28
前へ
/30ページ
次へ
◆◆◆◆◆ 「お母さん! 騎士さん、目を覚ましたよ!」 ぼんやりと、声が聞こえる。 小さく開いた瞼は、そのまままた閉じてしまいそうな重さをもっている。 「お母さん!」 バタバタ、と誰かがどこかへ行く。 目を開けた先は真っ白だった。 陽の光をもろに見てでもいるように眩しくて、思わず眉を寄せ、目を閉じる。 二つの足音がこちらへ戻ってきた。 一つは先程「お母さん!」と声を上げ、走っていった子供。 もう一つは、『お母さん』だろうか。 二人が、すぐ横に来る。 起き上がろうとしたが、全身が鉄になったようにピクリとも動かなかった。 「──無理をしないで、」 『お母さん』の方が声をかけてくる。 温かみのある、けれどしっかりとした声だった。 話をしようと口を開いたが、喉が焼けているのか、ひどい痛みがするばかりで声も出ない。 『お母さん』が静かに話しかけてくる。 「──目と喉が焼けているの。 軽い炎症だから、治療をしっかりしてよく養生すれば随分良くなるわ」 言ってくる。 そうして一呼吸置いて、『お母さん』は話を続けた。 「私はショークン村のイーヴェ。 魔導医師よ。 それから──私の娘を紹介するわね」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加