1人が本棚に入れています
本棚に追加
◆◆◆◆◆
「お母さん!
騎士さん、目を覚ましたよ!」
ぼんやりと、声が聞こえる。
小さく開いた瞼は、そのまままた閉じてしまいそうな重さをもっている。
「お母さん!」
バタバタ、と誰かがどこかへ行く。
目を開けた先は真っ白だった。
陽の光をもろに見てでもいるように眩しくて、思わず眉を寄せ、目を閉じる。
二つの足音がこちらへ戻ってきた。
一つは先程「お母さん!」と声を上げ、走っていった子供。
もう一つは、『お母さん』だろうか。
二人が、すぐ横に来る。
起き上がろうとしたが、全身が鉄になったようにピクリとも動かなかった。
「──無理をしないで、」
『お母さん』の方が声をかけてくる。
温かみのある、けれどしっかりとした声だった。
話をしようと口を開いたが、喉が焼けているのか、ひどい痛みがするばかりで声も出ない。
『お母さん』が静かに話しかけてくる。
「──目と喉が焼けているの。
軽い炎症だから、治療をしっかりしてよく養生すれば随分良くなるわ」
言ってくる。
そうして一呼吸置いて、『お母さん』は話を続けた。
「私はショークン村のイーヴェ。
魔導医師よ。
それから──私の娘を紹介するわね」
最初のコメントを投稿しよう!