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「イーヴェの娘の、オリンです。
こないだ5才になったばっかり。
騎士さんの看病、私も手伝ったの」
とても可愛らしい、しっかりした声で子供の方──オリンが言う。
イーヴェがくすくすと笑った。
「それじゃあ小さな看護師さん。
薬棚からシシイロ草の傷薬を取って来て下さる?」
「は~い、イーヴェ先生」
今にも笑いだしそうな弾んだ返事をして、オリンがパタパタとどこかへ行く。
「……あ……」
声を発する。
何を言いたいのかは、声を出した当人にも分からなかった。
ここはどこか。
村は──騎士団の皆はどうなったのか。
村を襲った者たちは?
それを察するかのように、イーヴェがそっと、青年へ向け口を開く。
「──本当に無事で良かったわ。
今は何も心配せずに体を治す事だけを考えて……と言うのが本当だけれど……。
いくつか、早急に話しておかなくてはいけない事があるの。
聞きたくないと思ったら、無視して寝てもらっていても、構わない」
心痛そうに、けれどきっぱりとした静かな口調に、青年が見えていないはずの目をイーヴェへ向ける。
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