一章 騎士の覚悟

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強く大きな意志を秘めた目に、イーヴェはほんの少し息をついて、口を開く。 「──まず、あなたの体の事よ。 さっきも言ったけれど、きちんと養生すれば目も喉も以前と変わらないくらいには治るはずよ。 問題は体の方。 ……手も足も、軽く動かせるほどには治してあげられる。 でも、重いものを持ったり、激しく動いたりという事には保証が持てない。 だから、それだけは覚悟しておいてもらいたいの。 それと──」 いいかけて、イーヴェは青年を沈痛な面持ちで見つめる。 青年はイーヴェの言葉に反応こそしなかったが、それでも耳を頼りに、こちらの話を真剣に聞いているのが分かる。 「……見たところ、あなたは『北方騎士団』の人のようね?」 問いかけた先で、青年がピク、と指を動かした。 肯定と取っていいのだろう。 イーヴェは すっ、と息を静め、言う。 「『北方騎士団は、国に対する反逆を企てた罪で滅ぼされた』」 「〜〜っ!」 静かに放った言葉に、青年が思わず起き上がろうとする。 けれど青年の意思に反して、そのどの部位も──ただの足先一つでさえも、ピクリとも動きはしなかった。
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