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青年が反応も出来ない間に、イーヴェは言う。
「……そういう噂が、出回っているの。
あの村を焼き払い、村人を虐殺したのは北方騎士団。
そしてその悪行に正義の鉄槌を下したのは宮廷魔導士と聖堂騎士であった、と。
──私にはどれが本当の事なのかは分からない。
北方騎士団の団長殿が識者として名高いのは、この辺りではよく知られている。
仁義の方で、とても、罪のない村人達を理由なく虐殺する様なお方ではない、と。
けれど、国王陛下が北方騎士団の反逆を信じたのは本当らしいわ。
おそらくあなたは、例え無実を訴えて登城したとしても、反逆罪で殺される。
だから……覚悟してほしいの。
騎士として生きる事を、あなたがあなたであった事を、捨てる覚悟を」
青年は、くしゃ、とシーツを握る。
さしてなくなってしまった握力で、目だけをこちらへ向けたまま。
その目には何一つ、見えているはずもないのに。
──パタパタと音を立て、オリンがこちらへ戻ってくる。
イーヴェは心配そうに青年を見つめ、そうしてオリンが戻ってくるのを待ったのだった。
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