3-2. 一億年の刑罰

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3-2. 一億年の刑罰

「さて、君、テロリスト集団に魂を売ったね? 情報、吐いてもらうよっ!」  シアンはうれしそうに言う。 「バーカ、仲間を売るわけねーだろ!」  ルドヴィカは今度はシアンに殴りかかったが……、こぶしはシアンをすり抜け、空を切った。 「きゃははは! もうこの部屋は『時の結晶』に変えてある。この世界には君しかいないんだ」 「また、面妖(めんよう)なシステムを作りやがったな……。だが、何したって無駄だ! 吐くぐらいなら死んでやる」 「どうやって死ぬの?」  シアンはニコニコして聞く。 「そんなのこれで心臓一突き……。あれ……?」  ルドヴィカは机の破片を拾おうとして、手がすり抜けてしまったことに驚く。 「君の身体はもう何とも干渉しない。まぁ幽霊みたいなものだよ。お腹もすかないし、老化もしない。死ぬことなんて無理だねぇ。きゃははは!」 「マ、マジかよ……」  唖然とするルドヴィカ。 「じゃあ、僕は十年後に来るよ。その時、また返事を聞こう」 「じゅ、十年後!?」 「そう、その次は百年後、その次は千年後……、さて、何年後に吐いてくれるかな?」  シアンはワクワクしながら言う。 「ちょ、ちょっと待てよ! そんな未来に情報吐かせたって意味ねーだろ!?」 「『時の結晶』内の一億年って外の世界の一日くらいなんだよね……」  シアンは首をかしげる。 「一億年!?」 「そうだ、最初から一億年待ってみようか?」  シアンは満面に笑みを浮かべて言う。 「ま、ま、ま、待ってくれ!」  ルドヴィカは顔面蒼白になって頼む。 「一億年じゃ全部忘れちゃうか。では、十年後、また会おうね! きゃははは!」  シアンは嬉しそうにそう言うと、消えていく……。 「あっ! 待てって言ってるだろ! チクショー!!」  ルドヴィカは必死に吠えたが、その声はどこにも届かなかった。         ◇  一分後、シアンが部屋に戻ってくると、ルドヴィカは十年の放置ですっかりやられてしまい、ぐったりと床に転がり、うつろな瞳がただ宙を映していた。 「おまたせちゃん! 吐く? それともまた百年待つ?」  シアンはニコニコしながら聞く。  ルドヴィカはヨロヨロと起き上がると、おもむろにシアンに土下座をした。 「全て……吐きます。だから……殺してください……」  シアンはうれしそうにうんうんとうなずいた。         ◇ 「パパー! テロリストの拠点が分かったよ~!」  シアンはメゾネット造りのオフィスの階段を下りながら、手を振って言った。 「よくやった。それじゃ作戦会議だ」  パパと呼ばれた男性「(まこと)」はニコッと笑い、ヴィーナたちを再度集める。 「ルドヴィカの星はどうしよう?」 「そんなの廃棄処分以外ないわよ。テロリストがどんな仕掛けを残してるか分からないんだから」  ヴィーナは言い切る。 「残念だけど仕方ないわね」「もったいないけどなぁ……」  他のメンバーも渋々同意する。  腕を組んで目をつぶり、渋い顔をしていた誠が意を決したように言う。 「では、廃棄で行こう」 「それじゃ、システムはシャットダウンして初期化するわね」  ヴィーナはそう言って手を高く上げる。 「ちょ、ちょっと待って……」  誠はヴィーナの手をつかんだ。 「何よ? また予言?」  いぶかしげにヴィーナは言う。 「焼却処分したらいい事ありそうなんだよな……。シアン、焼却処分でお願い」  そう言って誠はシアンに頼んだ。 「わかったよ。きゃははは!」  シアンはうれしそうに笑う。 「まぁ、いいわ。で、テロリストはどうすんのよ? 私は嫌よ」  ヴィーナはジト目で誠を見る。 「あー、新人たちに任せるか。四人いたよね?」 「新人……ですか?」「うーん……」  メンバーたちは不安そうに眉をひそめる。 「実戦を経験して育てないといけないかなって……。四人で勝てそう?」  誠はシアンに聞く。 「うーん、ヴィクトルなら一人でもいけるんじゃない?」 「ヴィクトル?」 「ドラゴンと結婚した大賢者よ」  ヴィーナが言う。 「あー、あの六歳児!」 「あの子、もう子供いるのよ。可愛いドラゴンの女の子」  ヴィーナは幼女の映像を空中に浮かべ、目を細めながら言う。 「えっ!? 六歳児が!?」 「もういい青年よ。ほらこれ」  そう言いながら映像に出てきた若い男を指さす。 「へぇ……。じゃあ、彼に出動してもらうようにお願いできるかな?」 「え――――、私? 自分でやりなさいよ」  ヴィーナは口をとがらせてジト目で誠をにらんだ。 「僕から言っとくよ!」  シアンはニコニコしながらiPhoneを取り出す。  そして、画面をつらつら見ながら、 「あら、テロリスト集団はヴィクトルの星の南極に逃げだしたみたい。都合いいかも」  と、どこかに電話をかけた。
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