日本人だけはイギリスの食文化を馬鹿にしてはいけない

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日本人だけはイギリスの食文化を馬鹿にしてはいけない

 もう二十年以上昔になるが、ミャンマーのメイミョという町を訪れたことがある。この町はイギリス植民地時代の避暑地だったところで、タクシー代わりに馬車が走り、コロニアル建築の建物が立ち並び、ゴルフ場や乗馬場もある東南アジアにあって古いイギリスの面影を残す町だ。  私はこの町で、その建物自体が日本で言うなら重要文化財に指定されるような歴史と格式あるホテルに宿泊した。  ディナーはもちろん伝統的なイギリス料理で、メインディシュはローストビーフである。これはとても美味しかったし、テーブルに置かれていた漢字で「英王室御用」と書かれているウスターソースが肉にとても合った。  ところでイギリスといえばとかく「料理が不味い」とイギリス人自体が自虐ネタにするので、調子に乗って非イギリス人もイギリス料理を馬鹿にしがちなのだが、ここではっきり言っておこう。  他国の人々がいくら馬鹿にしても、我々日本人だけはイギリスの食文化を馬鹿にしてはいけないのである。それどころが敬意をはらうべきだ。  なぜかって?  それは現代日本人の食生活に欠かすことのできないふたつの調味料、ウスターソースとカレー粉を発明したのがイギリス人だからである。  ウスターソースはイギリスのウスターシャ地方で作られたソースが名前の由来だ。イギリス人はフランス人のように生産地について煩く言わないので、日本人が日本で勝手に作ったソースをウスターソースと読んでも文句を言わないが、だからといって敬意をはらわなくても良いわけではない。  もしもこの日本にウスターソースというものが存在しなければ、トンカツに何をかけて食べるのだ?お好み焼きは?たこ焼きは?アジフライは?  もちろんウスターソースが無くてもそれらを食べることはできるが、ずいぶん寂しいものになることが想像できるであろう。  カレー粉は植民地時代のインドの料理をイギリス人が簡単に作れるようにと開発したものだ。このカレー粉を使ってルーを作り、肉や野菜を煮込んで作るカレーライスはイギリスから日本に伝わったものである。  イギリスのカレー粉が存在しなければ、日本にこれほどカレーが根付くことは無かったであろうことは断言してもいい。  これで日本人はイギリスの食文化に敬意をはらうべきという私の主張に納得していただけただろうか?  ここまでの話を女性の友人に話したところ、次のような事を言われた。 「それはそうなんだけど、どうしてイギリス人てせっかくウスターソースを発明したのに、ちょっとスープに味付するくらいにしか使わないんだろう?どうしてフィッシュアンドチップスにウスターソースをかけずに酢をかけるの?」 ん~・・たしかにそれは謎だぞイギリス人。。
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