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その瞬間、彼女が崩れるように僕の方に倒れ込んで来た。
「大丈夫?」
すぐに彼女を支えられる距離にいた僕は自然と彼女の腕を掴んだ。
「みっともないでしょ。ほんと、情けない。」
そこにへなへなと座り込んだ彼女は力なく笑った。きっと腰が抜けたんだろう。
「ほんとはね、死のうと思ってここに来たの。何かもう、全部嫌になっちゃって。
でも暗いのは怖いから、明るい内に来れば勢いで何とかなるって、そう思った。けどいざそこに立つとやっぱり怖くなっちゃって。だって高いんだもん、ここの崖。」
なくなればもう取り戻せないその命を終わらせるのには相当な覚悟が必要なはずだ。なのに高いという理由で身を引くなんて。本当に人間はわからない。
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