ヒトクイ

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 「あー!!辞めた辞めた!何か、アホらしくなってきちゃった。私帰るね。アンタも早く帰りなよ?」  ようやく体に力が入ったらしい彼女は立ち上がり、何事もなかったように手を上げた。さっきまで死のにおいを放っていたとはまるで思えない程、優雅に黒髪とスカートを(なび)かせて彼女は去って行く。    本当に人間は。  理解の難しいその行動に困惑しながらも、彼女はもうここには来ないだろうと、良いことをした気で僕は彼女を見送った。
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