第9話 人として人らしく生きていく

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—1—  地球に降り立ってから1週間。  私とバベルは内閣総理大臣官邸に来ていた。 「リヴ様、完全部外者の我々が総理と直接会って話がしたいと言ったところで相手にされないのがオチかと。その証拠に警備員が要件を伝えに行ってから20分経ってます」 「その時はその時。正攻法がダメなら時間を止めて中に入ればいいよ」 「それはちょっと強引じゃないですか?」 「遅かれ早かれこの国のトップとは話さないといけない。だったら早いに越したことはないでしょ? こういうのは強引くらいがちょうどいいの」  官邸前でバベルとそんな会話をしていると、ようやく警備員が戻ってきた。 「大変お待たせ致しました。中で総理がお待ちです」  警備員に案内され官邸の中へ。  子供の悪戯だと追い返されることも視野に入れていたが、こうもあっさりと受け入れてもらえるとは。  この国のトップは心が広いのかもしれない。それか危機管理能力が低いか。 「失礼します」  ノックをして扉を開けると中年の男が机に腰を掛けて書類に目を通していた。 「初めまして。神代(かみしろ)です。一応日本という国を治めさせてもらってます」  神代は書類を机に置き、私とバベルを値踏みするようにねっとりとした視線を向けてきた。  その視線に怯まず、私は一歩前に出た。 「ニンファー星第27代国王リヴとその護衛の」 「バベルです」  私の背後に控えたバベルが頭を下げた。 「立ち話もあれですし、どうぞお掛けになって下さい」 「ありがとうございます」  見るからに高級そうな革張りのソファーに身を預けた。  うん、ふかふかだ。 「随分とお若いんですね」 「今年で18になりました」 「そうですか。それはそれは。いや、実は私にもリヴさんと同い年の娘がいましてね。娘の歳で王様だなんて考えられませんね」  机に用意されていたコーヒーに口をつける神代。  様々な人間の接待をしてきた経験からなのか話しやすい空気を作るのが上手い。  だが、私は相手のペースに乗らない。  今日は交渉をする為に足を運んだのだから。 「私が別の星からやって来たことを疑わないのですね」 「正直に言えば悪戯という線も考えましたよ。ですが、リヴさんの目を見れば嘘を言っていないということは分かります。こう見えても人を見抜く力はあるんですよ」  神代は冗談っぽく言って笑ってみせた。 「さて、お互い探り合いは止めにしますか。今日はどのような御用件で?」
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