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「それを話す前に私達がこの国にやって来るまでの経緯を説明したいのですがよろしいですか?」
私はニンファー星に隕石が衝突したことと星の民を地球に移住させたことを詳細に話した。
神代は時折驚いた表情を見せたが、適度に相槌を打ちながら落ち着いて話を最後まで聞いてくれた。
「話は大体分かりました。それで私に何をして欲しいのですか?」
「ニンファー星の民がこの国に住む許可を正式に頂きたいのですが」
私の目的はこれだ。
今は地球の生き物に変身して密かに適応しようとしているけれど、将来的には元の人間の姿で不自由無く生活させてあげたいという思いがある。
それと別の星からやって来たということが何らかの形でバレた時に差別的扱いを受ける可能性もある。
それらを防ぐ為にも国のトップから正式に許可を貰う必要があると考えたのだ。
「正式にですか。難しいですね。というのもそれを認めてしまったら他国からの反発は避けられないでしょう。何かそれを跳ね返すだけのメリットを提示して頂けるなら話は別ですが」
「自殺者の防止。これでどうでしょう?」
日本に来て1週間。
私もただフラフラしていた訳ではない。
お願いをする時は必ずと言っていいほど交換条件を求められる。
だから私とバベルは調べ上げた。
現在、日本で問題視されているのが自殺問題だ。
年間で2〜3万人が自ら命を絶っている。
私の能力は強いマイナスな感情を抱いている人間の声を聞くことができ、場所を特定することができる。
バベルの瞬間移動の能力と合わせれば自殺を未然に防ぐことも難しくはない。
「自殺防止対策はすでに我が国にも導入されています」
しかし、これといった成果は出ていない。
「神代さん、すみません。先程手にされていた資料が目に入ってしまったのですが、自殺禁止区域を立ち上げられるのですか?」
この部屋に入った時、神代が手にしていた資料の一部が目に入った。
その瞬間からこの流れに持っていくイメージが私の中で固まっていた。
「ええ、自殺者数2位の神奈川県を自殺禁止区域として指定する案が出ています」
「でしたら私がその自殺禁止区域の自殺者を1年間0にしてみせます。これでどうでしょうか?」
神代が初めて真剣な表情を見せるとゆっくりと机の上で手を組んだ。
「2年。2年間自殺者を0に抑えることができたらリヴさんのお願いを飲みましょう」
「分かりました。これからよろしくお願いします」
私と神代はガッチリと握手を交わした。
これが私と神代が裏で行った取引だった。
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