一目惚れ

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一目惚れ

 あれは完全に一目惚れ。  見つけた瞬間、何か彼女の周りだけ輝いて見えて、“好き”で頭がいっぱいになった。 「……俺、あそこ行く」  2階のギャラリーから手すりを持って目は下のコートに居る彼女から離せないままで呟く。 「は?どこ?」  隣に居た親友の下野(しもの)友樹(ともき)に聞かれるが、特に答えないままでいると肘で腰の辺りを突付かれた。 「長谷(はせ)!聞こえてんのか?無視すんなっ!」  今度は体でぶつかって来られて、俺はやっと俺の肩ほどまでの下野に目を向ける。 「……あそこ。あの黒のとこ」  指をさすと、下野は鼻で笑った。 「啓南(けいなん)?いや、無理だろ」  即、否定されて俺は無視したまま彼女を見つめる。 「あそこ頭いいんだぞ?お前の頭じゃ無理だって」  笑われても簡単に諦められなかった。 「お前は?」 「ん?」 「志望校どこ?」 「啓南」  にっこり笑われて、ただ言葉もなく見下ろす。  こいつ、実は頭いいんだっけ。  一瞬考えて、すぐに俺はコートに視線を戻した。  彼女は笑いながらシュート練をしているメンバーにどんどんボールを渡している。  そのパスも下手くそで、辿々しくて……かわいすぎる。 「俺と一緒にまだバスケしたくなったか?」 「違う」 「そこはそう!って言えよ!」  ビシッとツッコまれながら、俺はボールを2つ持ってヨタヨタとベンチに向かって歩いている彼女を見つめた。
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