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夢じゃない
チラッと隣を見……ても目には何も入らなくてちょっと下に移す。
「ん?」
瞬間、麗先輩がこっちを見上げて、俺は慌てて前を向いた。
「コタくんも電車で嬉しいなぁ」
歩きながら笑う麗先輩の肩に掛けているかばんがやけに大きく見えて、
「持つ」
言いながら手を伸ばすと、麗先輩はその手をギュッと握る。
「っ!?」
「彼氏と手を繋いで歩くって……よくない?」
「か……」
彼氏っ!!
麗先輩の口から出てきた言葉を脳内で反芻して幸せに浸った。
ただ、高校から駅まではほぼ直線の200メートル程ですぐに改札が見えてくる。
「コタくんはどっち?」
聞かれて定期を出すと、麗先輩もかばんから淡いピンクの定期入れを出してクルッとこっちに向けた。
その駅名は俺の降りる2つ手前。
「これから朝も帰りも一緒かな?」
にこにこと笑う麗先輩がかわい過ぎる。
今日、体育館で姿を見るまで会えるかどうかも不安だったのに、今……
「コタくん、行こ?」
俺の手を握ってこっちを見上げながら麗先輩が微笑む。
握られたその手をに少し力を込めると、麗先輩は嬉しそうに笑った。
夢じゃない。
本当に彼女になってくれたらしい。
俺は笑顔で話してくれる麗先輩の話に頷きながら、幸せを噛み締めた。
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