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「あれ?1年生か?どうかしたか?」
声をかけられて振り返ると、礼服にメガネのおそらく教師らしき人物が首を傾げていて慌てた下野に引っ張られながら道を開ける。
「あ、いえ!ちょっとバスケ部見たいなって……でも、今日はまだですよね!」
頭を下げた下野を見つつやっぱり体育館に目をやってしまう俺。
「入部希望か?」
笑うとその教師は俺と下野をゆっくり見た。
「歓迎だぞ」
「はい?」
「男子バスケ部顧問の澤田だ。今、部員少ないからなぁ。バッシュあるか?せっかくだから、明日体験してったらどうだ?」
メガネを上げて微笑まれて、下野はこっちを向く。
「はい」
俺は迷うことなく頷いてから会釈をすると、挨拶をして右肩に掛けたリュックの位置を正しながら昇降口に向かって歩き出した。
後ろから慌てて挨拶をして追いかけてくる下野の声がする。
本当ならあの先輩が居るかを聞きたかった。
でも、先生にそんなこと聞けないし、明日体験できるのなら……会えるかもしれない。
今までずっとただ想ってきたんだ。あと1日くらい……。
下野に言われた先輩が卒業している可能性は考えないようにして、ただ明日を待ちわびることにした。
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