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「おい!長谷!」
追いかけてきた下野の声でハッとする。
目の前には不思議そうに大きな目でこっちを見ている彼女。
「あ……好きです!」
咄嗟に出た言葉をどう処理したらいいかわからない。
コートに居たあの姿をずっと反芻し過ぎて今、目の前に居ることがもう現実なのかもわからなくなってきた。
「お前っ!バッカじゃねーの!?」
慌てたような下野がバシバシ背中を叩いてくるが、そんなの構ってなんかいられない。
「俺、1年の長谷虎太郎です。美人ですね……付き合って下さい」
普段、言葉なんてそんなに出てこないのに止まらなかった。
バカみたいなセリフだという自覚はある。
ただ、真っ白で頭なんて回らなかった。
目の前の……しかも、入口の格子越しの彼女はパチパチと瞬きをしてからゆっくり微笑む。
その笑顔だけで、もういい気がした。
振られたっていい。俺を見て微笑んでくれたなんて……他に何を望む?
だが……
「いいわよ」
彼女は笑いながらその格子を開けて俺の右手を両手で包んだ。
へへっと笑う彼女をただぼんやりと見つめる。
「私は3年の美原麗!よろしくね!」
段差があって俺が下なのに俺の鎖骨くらいまでしかない小さな彼女が笑いながら一生懸命見上げてくれる姿は……どれだけ下野に殴られようと覚醒しないほど、全ての意識を奪っていった。
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