勢い

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「おい。何してんだ」  低い声がしてパッと彼女が俺の手を離してしまう。  奥から歩いてきた男はメガネを上げながらこっちを鋭く睨んでいた。 「もー!東條(とうじょう)くん!そんな怖い顔しないのっ!1年生には優しく〜でしょ?」  頬を膨らませたり、にっこり笑ったり……彼女がかわい過ぎて何かいくらでも見ていられる気がする。 「それは新入部員にであってにではない」  睨んでいた男が更に目を細めようが関係なかった。 「あの!俺ら体験希望です!昨日、顧問の澤田先生に誘って頂いて!!」  俺も無言で見下ろすと、下野が慌てたように俺の脇から前に出る。 「話は聞いてる。だがな……」 「うんうん!聞いてる、聞いてる!経験者ってことだよなー?ポジションとかは?」  メガネの男の肩を組みながら茶髪のチャラそうな男が笑いながらこっちを見上げた。 「あ、俺は下野友樹、SG(シューティングガード)です!」  綺麗に気をつけをしてハキハキと挨拶する下野を見ると、「ほらっ」と下野に肘で突かれる。 「……長谷虎太郎です」  とりあえず頭を下げると、 「うん!(センター)だよな?」  わかりきっているであろうポジションを一応確認されて頷いた。 「入ってくれたらうちで1番高くなるんじゃないか?」 「本当!おっきいもんねぇ!」  彼女とチャラ男が一緒に笑って何となくおもしろくない。
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