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何度もそう言おうとした。
でも、なぜかそれを口にできなかった。
言ったところで、どうなるというのか?
孝之がそれを認めようが認めまいが、結果は最悪にしかならない。
この数日、頭の中はずっとそればかりだった。
仮に、それを問い詰めたとして、開き直った孝之は、私と別れて佳奈江を選ぶだろうか?
……いや、絶対にそれだけはさせたくない。
もしも、あのブレンドティーのことを言ったら……私を殺そうとした佳奈江を孝之はどう思うだろうか?
……ダメだ。
それですべてを終わらせるには、何かが足りない。
昼下がりに琥珀色に染まっていくティーポットを見つめ、できあがったホットティーを口にすると、少しだけ気分が落ち着いてくる。
冷静になってよく考えてみると、孝之が選んだのは佳奈江ではなく、この私だった。
悪夢が見せた結婚式で、ライスシャワーの米を握り締めていた佳奈江は、心から私達を祝福しているようには見えなかった。
そう、あの時点で、私は佳奈江に勝っていた。
孝之が選んだのは佳奈江ではなく、この私。
佳奈江の悔しそうな顔を思い出すと、私は二人にささやかな復讐を誓った。
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