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「指輪、私が着けてもいいかな…?」
「ああ。構わないよ」
結婚する時に二人で選んだ指輪を思い出の物として、新しく二人で選んだ指輪を二人で着ける。
「…正樹、結婚した時より太ったからか太くなったしゴツゴツしてるんだね」
「じゃあ俺も着けるから…ほら…手、出して」
「うん…」
「お前の指も太くなったんじゃないか?それに…こんなに小さな手…だったんだな」
手を握られたのも指先に触れられたのも凄く久しぶりだった。
伝わる温もりに、正樹の手に何となく恥ずかしさをおぼえて、何だかくすぐったくて顔が火照りを帯びていくのを感じた。
誓いの指輪交換をしたあの日、緊張で私の手は震えていた。
正樹が差し出した手を上手く受け止める事が出来ずに指輪はコロンと床の上へ…
「ふふ…」
思わず笑ってしまった私を見つめて不満気な顔をする正樹。
「なんだよ…いきなり笑って…」
「ごめんごめん。思い出しちゃったんだよね。式の指輪交換の時の事」
思えばあの時から私達はどこか不格好でなかなか綺麗な形にはおさまらない二人だったよね。
「お前、あの時指輪を落としたんだよな。バージンロードではドレスの裾を踏んずけて躓くし、足並みはなかなか揃わないし散々だったもんな」
私の言葉に正樹の記憶にも花が咲く。
頭の中にしまい込まれていた遠い日の記憶…。
笑い声が重なった。心からの笑顔と一緒に。
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