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すれ違い
2019年11月ーーー。
「亜美。俺、単身赴任する事になりそうなんだ。急だけど今月中には…1年だってさ。」
「え!?単身赴任!?1年も!?」
旦那から突然言い渡された「単身赴任」。まだこの時はそれが私と旦那の関係を一変させてしまうだなんて思ってもみなかった。
「ああ。1年か…俺にはキツいかもな。長いよな…」
結婚して13年。
考えてみたらそこまで長い期間離れて暮らした事は無かった。
でもだからといって離れたくない♡とか、寂しくてたまらない。
なんていう感情が湧いてくる訳もなく…
「そっか…でもさ、1年なんて意外とあっという間かもよ?今はスマホっていう便利な道具もある訳だし」
ねぇ、もしかしてこの時から既に私達はすれ違っていたのかな?
あなたは私にどんな言葉を望んでいたの…?
「そんなもんかねぇ…」
そういえばあの時あなたは悲しげな表情をしていた気がする。
でも私は…
「LINEはあるし電話なんてビデオ通話だって出来ちゃうじゃない。帰って来たかったら帰って来ればいいんだしね」
「まぁな」
「なぁにー?もしかして私と会いたくなっちゃうとか寂しいとか?」
「そんな事はねぇよ。亜美の顔は見飽きてるしな」
「えー!ひどっ!相変わらずだよね。正樹は!」
何も変わらないはずだった。
いつもと同じ様に茶化して笑い合って。
だけどきっとこの言葉や態度の裏側にある感情に、正樹は気付いて欲しかったのかもしれない。
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