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咲との電話後も暫くは何の変わりもなく過ごしていた。 正樹は連絡先を削除して以来、何となく私によく話しかけたりする様になっている気がする。 仕事から疲れて帰って来る平日は必要最低限な会話しかしていなかったはずなのに、何かと話題を作っては私を呼び止める。 (…あんな事があったのにどうしてそんな態度が取れるんだろう…?正樹の中では全て終わらせて元通りにするつもりなの?) は自分が終わった事だと思えばそれでいいのかもしれない。だけどの人間はそうもいかない。 いつまでも引きずりたくなくたって、一度傷つけられてしまった記憶は簡単には消えないし消せない。 それに正樹だってあの子への思いが簡単には消えないし消せないから未練がましく連絡先を残していたんでしょう…? 別に露骨に避けたり、悪態をついたりはしていないはずだ。 だけど… 心に残るしこりは簡単には取り除けないもの…。 どうして欲しいとか どうしたら受け入れる事が出来るのかなんてやっぱり分からなかった。 自分自身の煮えきらない気持ちにも苛立ちを感じてしまって、悪循環から抜け出す事が出来ずにいる。 (ダメだ…明日こそは動かなきゃ…) すれ違う二人の思いは交わる事なく先へ進んでいく。
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