タツヤ

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「ただいま~」 正樹が帰宅したのは日付けが変わってからの事だった。 お酒にはそれなりに強いはずなのに珍しく酔いが回っている様子だ。 「珍しいね。そんなに酔っちゃって」 「あー俺だってたまには酔うんだぜー?!今日は奢りだし強い酒飲んだからな」 はははと笑いながら上機嫌。 真っ赤に染まった顔と虚ろな目。 (酔っ払い…) 「お風呂入ってきなよ。酔いも少しは覚めるでしょ?」 「あーはい!手、貸して連れてって」 乱暴に私の手を掴んで歩き出す。 アルコールが入って温かくなった手から伝わる体温が私の心を揺さぶった。 「自分で行けるでしょ?」 すっ 振り払った手をぶらつかせながらゆっくりと瞬きをする正樹。 「…そんなの分かってる」 まるで酔いが覚めたかのように今度は冷たい表情をしていた。 一体何だというの? 「風呂入ったら寝る。先に寝てろよ。おやすみ…」 酔っ払いは演技だったの? 何だってそんな… 私には分からなかった。正樹がなぜそんな事をしたのかが。 心ここに在らず状態の私には、正樹の本当の気持ちが見えていなかったんだと思う。 今見たいと思っているのは…タツヤ君の気持ちだから―――。
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