169人が本棚に入れています
本棚に追加
因果応報
「おはようございます」
「おはよう」
(俺は何であんな事を言ってしまったんだ?)
昨晩、亜美に「最近何だか変じゃないか?」と言ってしまった…。
完全に心の声が漏れてしまって不意に出た言葉だった。
出勤して来たものの亜美の事が頭から離れなかった。
「あれ?新藤さん寝不足ですか?何か朝から疲れた顔してますよー。」
「いや…そんなんじゃないよ。歳だからなぁ俺も」
「そうなんですかー?俺となんぼも違わないのにー!」
後輩の島が声を掛けてきた。
昨年異動してきたばかりだが気さくで人当たりが良く、誰にでも隔たりなく接している。人を良く見ている奴だから俺の変化に気付いてるのかもしれない。
最近、寝付きが良くなかった。
何度も目が覚めてしまうからゆっくり眠れない。それに…亜美の事が気になって仕方が無かった。
上手くいっていないからという事もあるが最近何となく亜美の行動に違和感を感じる。
亜美が俺の件に勘づいたのもこんな些細な違和感からだったのか…?
自分がいつもと違っているかどうかなんて自分の目からは分からない。
だけど側にいて、いつも気に掛けているのなら話は別なんだ。
(あ…。)
気付いてしまった。
俺がいかに周りを見ていなかったのかを。いや、亜美に目を向けられていなかったのかを…だ。
亜美の存在が「当たり前」になりすぎていた。
最初のコメントを投稿しよう!