二人の約束

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深く深呼吸して一度頭の中を真白く染めた。 今は…白でいい。 【タツヤ君おはよう。会う日を決めましょう。】 言葉はこれだけでいい。 これだけで…。 もう後戻りは出来ない。 これで…いい。 ♪♪♪ 通知音が鳴り響く。 聞き慣れているはずの音がなぜか今日は違って聞こえる。 頭の中にジワジワと広がっていって離れなくなった。 【マコちゃんおはよう。返事を待っていたから通知音が鳴ったらすぐに見てすぐに返信しちゃったよ。会う日を決めても大丈夫なんだね?何だか今から緊張する…笑 じゃあマコちゃんの都合に合わせるから、マコちゃんが会える日を教えて。会う日を約束するのって何かいいよね。】 約束…か。 会う日を約束する喜びを感じでいたのはいつの頃だっただろうか? こんな風にドキドキしながら「会いたい」気持ちが溢れ出してきたのは…。 現実に戻って会っても大丈夫な日を探し出す。 日常と非日常とが重なる瞬間だ。 【再来週の水曜日でお願いします。タツヤ君が大丈夫だったら時間と場所も決めよう。】 短い言葉を書いては消し、書いては消しを繰り返した。 画面に映る機械的な文字に込めた思いが複雑に絡み合う。 後は送信ボタンを押すだけ…。 躊躇する自分の心を断ち切るように勢い良く指で画面をタップした。 前へ進むと決めたからには今更後悔した所で何も変わらない。 自分で選んで、自分で決めた事なんだから…私は自分自身の気持ちに寄り添うだけ…。 換気の為に窓を開けると訪れた春の風が肌をくすぐった。 まだ少しひんやりとしてはいるけれどどこか温かい風が。 不思議とその風みたいに穏やかな私の心は彼との約束を思って甘いため息をつきながらぼんやりと外の景色を眺めていた―――。
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