流れもののいかけ屋

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流れもののいかけ屋

「夜分にすいません。いかけ屋でございます」 「ああ、今は特に頼むことはないよ」 いかけ屋というのは鍋などに空いた穴を溶かした金属で塞ぐ「鋳掛け」を仕事にする人たちのことです。 トーマスの声に、いかけ屋の男は少し早口で続けました。 「突然の雪にふられて難儀しております。小さな子どももおりまして……どうか寝場所をお借りできないでしょうか」  トーマスとエマは顔を見合わせました。 「外は身を切る寒さだ」 「この家にはそうそう人が入るものではないわ」 「干し草置き場ならどうだろうね」 「火をたかないと約束できるなら。 干し草は燃えやすいもの」 二人は手早く話し合うと、いかけ屋を牛小屋の隣にある干し草置き場へと案内しました。
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