時間差の類いが迫り来る

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 就業後。帰宅し、押入れを捜索する前に簡単な夕食と共に缶ビールを開け、少しだけ気分が良くなった頃合いに、携帯電話が鳴る。  ――ナスコさんだ。  風邪が長引いたとかで、暫く伏せっていると聞いてから既に1週間以上経つが、快復したのだろうか。  負担を掛けては悪いと、その間は連絡することは控えていたので、久しぶりの連絡に僕は更に気分が良くなる。 「久しぶり。もう良くなった?」 「久しぶりに少し話をしたくなって……」  声色は少し弱々しい感じもするが、向こうから連絡をしてきたのであれば、おそらく快方に向かっているのだろう。  僕は近況等をナスコさんに話し、話の流れで昼間の先輩の(くだり)についても話をした。 「中々に頭がおかしいけど、そういう場合は効果的と言えば効果的かもね」  電話の向こうで、ナスコさんは笑っている。 「じゃあ私もその手を使うことにする。誕生日おめでとう」 「いや俺の誕生日、来月だし。知ってるでしょ」 「1ヶ月位なら許容範囲かと思って」  何が許容範囲なのかはわからないが、あの先輩の真似をするのは、良くないことではある。 「いや何の許容範囲かはわからないけど、また直接会った時にでも祝ってよ」 「でも今は電話の方が楽に話ができる気がする」 「そりゃまだ本調子じゃないだろうからね。暫く会ってないし、出来れば直接会って祝ってよ」  声色から察するに、まだ少し体調は悪そうではあったので、まずはしっかり治すよう伝えて、僕は電話を切った。
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