時間差の類いが迫り来る

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 少し、眠ってしまった。  どうやらナスコさんとの電話の後、少しだけ酒盛りしている段階で、そのまま寝てしまっていたようだ。喉が乾燥して痛い。  缶ビールを2本程しか飲んでいないのに、ふと気が付いたら午前1時過ぎだったため、疲れがあったのか年齢を重ねた結果なのかはわからないが、とにかく少し焦る。  明日が休みであれば、もうそのまま(とこ)に就くくらいの気だるさではあるのだが、明日もまた仕事ではあるので、シャワーと歯磨きくらいはしておこうと僕は霞掛かった頭を無理矢理叩き起こす努力をした。  半覚醒の頭で少し惚けていたが、暫くすると僕は律儀にも思い出す。  ……そういえば、忘れ物がないか、先輩に捜索するよう言われていたんだった。  別に明日以降でも問題はない気もする。しかし思い出してしまった手前、そのままにしておくと気持ち良く眠れない気もするので、とりあえず形だけでも探した振りをしておこうと、僕はリビングの縁に設置されたクローゼットの奥を覗いてみることにした。  クローゼットを開け、下部にある収納スペースを覗き見る。  引っ越した際に、とりあえず放り込んでおいた段ボールが3箱、封を開けずに鎮座していた。この1ヶ月の間、開けずに済んでいるのであれば、中には不要な物もあるのかもしれないが、荷造りをする際に取り敢えず詰め込んだ物達ばかりなので、この中には急を要さないだけで捨てるわけにはいかないものも入っている。  その場で開封しようとする衝動にも駆られたが、それをやり出すときっと朝になってしまうので、僕は当初の目的通り、クローゼットの奥を探索するために段ボールを引きずり出した。
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