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段ボールを引き抜く。
想像よりも重たい。
確か何処かにナスコさんから貰ったプレゼントやら2人で撮った写真やらを詰め込んでいた記憶もあるので、流石にそれは救出しておかないといずれ怒られる気もする。しかし今広げてしまうと収集もつかないので、無理矢理頭の縁から興味をずらした。
空になった収納スペースを覗き見る。
……何も無い。
まぁそんなものだ、と僕は思った。
しかしこれで務めは果たしたはずなので、明日先輩には、くまなく探し回ったが見つからなかったと伝えておけば、それで僕の昼食代は免除される。
こんなことで1食浮くのであれば、是非とも毎日忘れ物をしてほしいものだと考えていたら、気が付いた。
『た……び……と……』
声が聞こえる。
ぽっかりと空いた収納スペースの奥から、か細い声が聞こえる。
『た……お……でと……』
当然、焦る。
幽霊。
そうとしか思えない。
姿形は何も見えないが、クローゼットの奥から、間違いなく声が聞こえる。
どう考えても霊的現象の何かだとしか思えない。
突然の霊的体験に僕は動くことも忘れ、とりあえずその声に耳を傾ける。
『たん……び……お……でとう……』
……ん?
僕は意識を耳に集中して聞く。
『誕生日おめでとう……』
……いやなんで幽霊にお祝いされているんだ、僕は。
あと、僕の誕生日は来月だ。
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