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1.始まり:島崎蘭
ヴァージニア州にあるこの町も夏はやっぱり暑かった。だけど日本の夏みたいに蒸し暑いなんて。ここに引っ越して半年。10歳になったあたしは、幸いにも友達がたくさん出来た。父さんの仕事もデスクワークが中心になったおかけで、自宅で仕事をすることが増えたわ。引っ越しがなくなったの。
一方で予想外のトラブルにも見舞われるようになってしまった。
今、あたしは電柱の近くに自転車を停めて偵察している。ガキ大将のマックス・アフレックに言われて。10メートル先にはマクドネル・ハンバーガーショップがあった。店のロゴはスクールバスみたいに黄色くて、太陽の光をかなり反射させているから目がチカチカする。遠目で窓の中を見る限り、店内では例のミドルスクールの不良達が騒いでいた。いつものように店長が3人を窘めようとしているのが見えるけど、リーダーのケイシー・ルーサーから何かを言われると、店長は首を横に振ってカウンターへと戻って行く。失せろよオッサン、とでも言われたんだわ、きっと。
「ラン!」
名前を呼ばれて振り向くと、赤い自転車に乗った背の高い太っちょの少年が近付いて来た。クラスメイトのルー・レインだ。
「あれ? マックスはまだ?」
ルーは訊ねるとあたしの自転車の傍に自分の自転車を停めた。
「うん。まだ来ていないよ。いつもなら、先に来ているのに」
よく見るとルーの自転車は、テレビのコマーシャルで流れていたモデルと同じ自転車だった。父さんにお願いしたら、高価だから駄目だ、と怒られたのでよく覚えている。
「ところで、ケイシー達は中にいるの?」
今度はおどおどした様子で訊ねてきた。あたしは、
「いつも通り偉そうにしてるよ。店長に注意されても言うこと聞いてなさそうだった」
「そうか」
そう言ってルーは俯いた。まだ、おどおどしている。まあ無理はないけどね。何せ、ルーはケイシー達に携帯ゲーム機を取り上げられてしまったから。そして、その話を聞いたマックスはルーのゲーム機を取り戻そうと立ち上がったの。そのために、あたし、ルー、マックスはマクドネル・ハンバーガーショップの近くにあるアパート前の電柱で待ち合わせをしている。
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