1.始まり:島崎蘭

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 けれど、言い出しっぺのマックスはゲーム機を取り戻すための作戦を、あたし達2人に何も伝えていない。しかも、約束の15時20分になってもなかなか現れなかった。  しばらくルーと喋っていると、遠くのほうからヤンキースのキャップを被った少年が、青い自転車に乗ってこちらに近付いてくるのが見えた。  マックスだわ。マックスはアパートの入り口近くに自転車を停めると、前カゴに入った紙袋とレジ袋を持ってあたし達に近付いて来る。マックスの持っている紙袋を見ると、ビッグ・ナット・ハンバーガーのロゴが入っていた。味にこだわった値段が高めのハンバーガーチェーン店だ。レジ袋はスーパーのロゴが入ってるけど、何が入っているのかしら。 「遅いじゃん。どうしたの?」  あたしはマックスに訊ねる。 「色々と準備してたんだよ」  そう返したマックスにルーが、 「何でキャップを着けてるの?」  マックスは普段からキャップを身に付けていない。レッドソックスのファンなのにヤンキースのキャップを被っている。 「後で説明するから。ほら、これを被れ」  マックスはそう言うとレジ袋からキャップを2つ取り出した。エンゼルスのキャップとウィザースのキャップだ。何て統一感がないの。MLBのチームとNBAのチームじゃない。エンゼルスのキャップをあたしに、ウィザースのキャップをルーに被せると、 「準備OKだ。じゃあ、アイツ等からゲーム機を取り戻そうぜ」  マックスがそう口にすると、あたし達はマクドネル・ハンバーガーショップへと向かった。その間に、あたしはマックスが左手首に腕時計を2つ着けていることに気が付いた。2つともデジタルの腕時計だ。ファッションのつもりなのかな?
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