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「走れッ! ラン! ルー!」
マックスが叫ぶ。僕も耳を塞いでいるランの手を掴んで、店の入り口に向かって走りだした。店内は大騒ぎだ。皆して外に逃げ出している。僕達はそんな彼等に押し出されるように外に出ると一目散に、自分達の自転車を停めているアパート前に走って行った。マックスは取り返したゲーム機、財布、腕時計を自転車の前カゴに入れる。
あれ? ない!
僕の自転車がない!
ランとマックスは自分達の自転車に乗って走り出そうとする。
「ちょっと待って! 僕の自転車がないんだ!」
2人に言った。
「何言ってる! 落ち着いて探せ!」
マックスが怒鳴る。急いで周りを見渡した。赤い自転車、赤い自転車─やっぱりない!
「じゃあ盗まれたんだろ!」
マックスが言った。
「僕、僕、どうしよう! どうしよう!─」
「馬鹿ッ! 俺の後ろに乗れッ!」
言われた通りに、慌ててマックスの自転車の後ろに乗った。ランは先に自転車で走り去って行く。
ピー、ピー、ピー─。
また腕時計から電子音が鳴る。今度は違うほうからだ。
その瞬間、マクドネル・ハンバーガーショップの前にパトカーが3台もやって来て、警察官がたくさん出て来た。
一体、何なんだよお! 夢じゃないのかあ?
泣きそうになっていると、突然、銃声が鳴った。
後ろを見るとケイシーが警官達に向かって発砲している!
警官達も発砲して応戦していた。
もう無茶苦茶だった。
マックスが自転車を漕ぎ始めると、こちらに向かって誰かが走って来るのが見えた。
ジョニーだ。がに股でこちらに向かって走って来る! その右手にはジャックナイフが握られている!
「急いで漕いでよ!」
「馬鹿野郎ッ! 重いんだよッ! お前こそ蹴って押せよッ!」
マックスに言い返されて、地面を蹴って自転車の勢いを付けようとする。この間に、がに股で走って来るジョニーが距離を詰めて来る。よく見ると、ジョニーの股がビショビショに濡れていた。風が吹いた瞬間、僕は理解した。ションベンじゃない! ジョニーはウンコを漏らしている! 何度も地面を蹴っていると、ジョニーが後ろから来た警官に取り押さえられた。
「動くな糞野郎!」
喚くジョニーに警官が怒鳴った。
マックスの自転車に勢いが付いてきた。マクドネル・ハンバーガーショップからどんどんと遠ざかって行く。
助かった。
気が付くと、僕達は2マイル先の見知らぬ空き地まで逃げていた。
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