余計な火種

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 今現在夫婦揃っているのはトメとトヨシマの2人だけ。トメは義父母と30年間同居した。  ハマコは独身を貫き、ミドリとチョウコとヨネは未亡人である。みなそれぞれの人生があって、長年磨き続けた形の違うダイヤモンドがそこに並ぶ。 「トメさん。素晴らしいわ。そう思える旦那様がいて羨ましい。おふたりで築き上げたものはおふたりにしか通じえないものですものね。昨日のやりとりは本当に微笑ましくて楽しそうで。見えない絆がそこにあるんですね」 「ミドリさんありがと。偉そうなこと言えた義理じゃないけど、私たちってさ、残り僅かな人生を少しでも楽しくいられるよう、健康に気をつけることのが大事じゃないーー。つまらないゴタゴタなんか何の肥やしにもならないもの。忘れるのが一番よ」 「おぉ、さすが同居して苦労しただけある」 「そうね。忘れるのは私たちの得意分野だわ」  ミドリは自信もって言う。 「確かに私は夫婦のことはわからないけれど、でも独身だからこそ自分磨きは継続するからね。トメさんがイヤだと言うなら圭二さんには近づかないけど」
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