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商店街の隅にひっそりと佇む小さな店──如月相談所。父の弟に当たる楓おじさんが経営がしており、私はアルバイトとして働いている。しかし、今日は相談側──いや、相談者を連れてきた側だ。
「本当に、解決するの?」
暖かい雰囲気のドアに手を伸ばした時、友人の沙羅は制服の袖を引っ張ってきた。不安げな瞳が溌剌としている彼女には似合っていない。
「大丈夫だよ」
私ははっきりとそう告げた。
沙羅の悩みを解決するべく、ここに連れてきたのだ。
如月相談所はどちらかと言うと推理色が強い依頼が多い。元カノが不可解な手紙を残して消えた、だとかそう言ったものだ。ただ、相談所だし、おじさんは正式な探偵ではない。なにより、優しい人だから相談の乗ってくれるはずだ。
私は大きく頷くとドアを開けた。カラン、とドアベルが優しく響く。
「いらっしゃいませ──えっ、明莉? どうしたんだい? 今日バイトじゃないよね?」
給湯室からおじさんがひょっこりと顔を出してきて、目を見開いた。
「あ、あのね……今日は依頼側っていうか、依頼人を連れてきたんだけど」
「えっ?」
「沙羅、入って」
まだ入り口で不安げに佇んでいる沙羅をグイッと引っ張って店内に入れた。
こじんまりとしたお店は深い色の木でできていて、中央には大きなテーブルがある。入ってすぐ、すなわち私たちがいるところが応接室で横には給湯室がある。部屋数はたった二つの小さな空間だ。
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