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絶対気のせいじゃない、本当に誰もいないんだって、すぐわかった。だって、ドア近くに座ってる学級委員が先生に質問してたから。
「先生、その生徒は本当に一緒に来たんですか?」
ってね。
先生は弱々しく首を振った。「違うのよ」って、心の底から参っちゃったみたいで、ちょっとかわいそうだったな。
「本当は一緒に来る予定だったんだけどね、全然職員室に来てくれないの。連絡もつかなくて、きっと遅刻してるんだと思って、案内は他の先生にお任せすることになって……」
最後の方は、よく聞こえなかった。口の動きからして、「なって……、なってたんだけど、おかしいな、どうしよう」とか、そんな感じのつぶやきだったと思う。
生徒含めみんな困ってたら、遠くから足音が聞こえてきた。
先生、ものすごいスピードで廊下に出て行った。教室から「廊下は走っちゃダメなんだよー」なんて聞こえてきたり。
期待したよ! やっと来るって。
私たちみんな同じ気持ちだったはず。先生のこと茶化しながらもね。
期待して廊下の方を見ていたら、戻ってきた先生は、さっきの比じゃないくらい肩を落としてた。そのままじゃ肩が床についちゃうんじゃないかってくらい、落ち込んでた。
……そりゃあ察するよね。私たちも、先生ほどじゃないけど、肩を落とした。
「離さんはまだ来ていません」
知らない初老のおじいちゃんが教室に顔を覗かせて、学年全体に事務連絡するときみたいな声で宣言した。
離さんっていうのが、きっと新たな仲間のことだ。
「皆さんへの紹介は明日以降になります。本日はこれで解散。いいね」
教室はざわついた。いいね、って言われて、いいよ、って返せるほど、私たちはドライじゃなかった。
それでも早く帰れって言われちゃって、仕方なくぼちぼち解散し始めた。
結局離さんのことはよくわからずじまい。
モヤモヤするよね!
そう、これが事件。新たな仲間が来なかったの。大変でしょ!
だからみんなで解決しよう! なんで来なかったのか、今どこにいるのか。
これが、これまでの事のあらまし――。
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